スペインの風、ヨーロッパの大地

20代最後の1年、スペインにフラメンコ修行にやってきました。

スペインは遠い国?

コロナウイルス感染症の拡大防止対策として、スペインで外出制限が始まってから、早くも2ヶ月が経ちました。
警察や軍が監視する中、必要最低限の買い物以外の外出は禁じられ、私は買い物に出かけるのも10日に1度といった生活が続きました。
いつもは大勢の人でにぎわう近所の広場も、お天気が良い日でも、ご覧の通りの静けさ。見たこともないようなスペインの光景が広がっていました。

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その効果が表れてきたのか、5月に入ってからは、新たに報告される感染者数も一時に比べればだいぶ落ち着いてきていて、少しずつではありますが、制限が解除され始めています。
ただ、子供たちの学校は8月までお休みですし、私が通うフラメンコのスタジオも、いつ再開になるのか、まだ発表さえされていないのが現状で、先の見通しが全く立たないという不安は抱えたままの生活が続いています。

幸い、私の場合は、同じ家に住む人たちがとても良い人たちだったこと、時間ができた友人たちと電話したり、インターネットで配信される様々なコンテンツを楽しめたことなど、この軟禁生活にそれほどストレスを感じてはいませんでしたが、スペインの国境が封鎖され、航空便がなくなり、日本とスペインの距離をここまで遠く感じたのは初めてのことです。

実際のところは、インターネットの普及によって、物理的な距離という概念は払拭されたと思う方もたくさんいらっしゃることと思います。
例えば、SkypeやLINEなどを使えば、国境を越えて電話をしたり、アーティストによるLive配信では住む場所や交通手段など関係なく、誰もが同じ時間を共有して楽しむことができます。

しかし、どんなに近くにいても、それが遠ければなおさら、実際に移動することができない、人に会うことができないというこの状況は、自分以外の場所がとてつもなく遠い世界に感じられて、仕方がないのです。

実際に、私の知人も、ゴールデンウィークや夏休みにスペイン旅行を計画していた人、9月に行われるフラメンコフェスティバルに来る予定だった人など大勢いますが、恐らく皆さんキャンセルになることでしょう。

もちろん、スペインではいまだに国境封鎖が続いていて、自国民と居住許可書を持つ外国人などしか入国ができません。しかも、航空便が運よく手配できたら。の話です。
さらには、国外から訪れるすべての人に対して、14日間の隔離措置をとることが発表されたので、無事にスペインに入国できても、さらにそこから14日間の軟禁生活が続くということになります。
コロナウイルスが猛威を振るう前、たまたま日本に一時帰国していた人でさえ、現状では、自分のスペインの家に帰ることも、決して容易なことではないのです。

だいぶ昔の話になりますが、私の日本でのフラメンコの師匠が、1966年に横浜港から出港し、シベリア鉄道ユーラシア大陸を横断してスペインまでたどり着いたという話は、フラメンコ界であまりにも有名な話です。
その後、気軽に海外旅行をしたり、留学できるようになって、多くの日本人が海を渡り、スペインでフラメンコを学んでいきました。私もその中の1人です。
100年前には想像もできなかったような海外での生活が身近になり、今またその当たり前が遠ざかってしまっているのです。

昔とと比べれば、もちろん、世界中どこにいてもコミュニケーションはとれるし、たくさんの情報をゲットすることができます。
でも、自由に行き来することができない今、あなたはスペインが遠い国だと思いますか?